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買ったのにぶかぶかで抜ける。きつくて入らない。無理に押し込んで割れる。市販の脚キャップは呼び寸法が飛び飛びなので、手持ちの椅子に合うものが見つかりません。
椅子の脚にかぶせるカバーを買ったのに、ぶかぶかで抜ける。あるいはきつくて入らない。無理に押し込んで割れる。経験のある方は多いと思います。
市販の脚キャップは、呼び寸法が飛び飛びです。16mm 用の次が 19mm 用、その次が 22mm 用、というように。
手持ちの椅子の脚が 17.5mm だったらどうするか。16mm 用には入りません。19mm 用はぶかぶかです。どちらを買っても正解ではないという状態になります。
これは売る側が不親切なのではなく、量産の都合です。寸法ごとに型を作るので、刻みを細かくすればするほど型が増えます。飛び飛びになるのは当然のことで、だから世の中の椅子のうち何割かは、必ず合わないままになります。
当社では3Dプリンターで作る部品を、寸法を指定して注文できる形にする準備を進めています。脚キャップもそのひとつです。
ノギスで測った値をそのまま入れてもらいます。17.5mm なら 17.5mm で作る。丸脚でも角脚でも、長方形でも作れます。型が要らないので、刻みを細かくしても手間は変わりません。
ここまでは、作り方を変えただけの話です。面白くなったのはこの先でした。
測った値で作るというのは、設計の上での話です。
3Dプリンターは、溶かした材料を積み上げて冷やして固めます。冷えるときに材料は縮みます。縮む量は材料によって違い、同じ材料でも機械や温度の設定で変わります。同じデータを渡しても、刷る環境が違えば仕上がりの寸法は変わります。
ですから、脚の寸法とは別にすきまを指定できるようにしてあります。脚とカバーの内側の間にどれだけ余裕を持たせるか、という値です。きつければ入りませんし、緩ければ抜けます。この適正値は、その人の機械でないと決まりません。
そこですきまを測るための試験片を無料で配っています。いくつかのすきまを並べた板で、自分の機械で刷って、どれがすっと入って抜けないかを確かめてもらう。測った値を注文のときに入れてもらえば、その環境に合ったものが作れます。
「測ったとおりに作れます」とだけ言うほうが売り文句としては簡単です。ただ実際には、寸法は刷る人の環境まで含めて決まるものでした。そこを隠すと、届いてから合わないという話になります。
寸法を自由に指定できるようにすると、使えない指定ができてしまいます。
たとえば高さです。脚が入る深さが浅いと、かぶせても抜け落ちます。最初は 2mm の掛かりでも作れるようにしていましたが、試してみると2mm では抜けました。いまは脚の入る深さが 5mm 未満になる指定を、理由を添えて断るようにしています。
「言われたとおりに作って送る」のは簡単です。届いた人は、使えないものを受け取ります。作れることと、使えることは別でした。
もうひとつ、作らない判断をしたものがあります。フェルトを貼るための窪みです。
床に当たる面に浅い窪みを彫って、そこにフェルトを貼れるようにする。親切な機能に見えます。ところが3Dプリンターでこれを作ろうとすると、どちらの向きで刷っても具合が悪いのです。窪みのある面を下にすると、窪みの天井が宙に架かります。上にすると、今度は閉じた面が空洞の上に架かります。どちらでも支えが要るので、仕上がりが荒れます。
そこで底は平らにして、市販の貼るフェルトをそのまま使っていただくことにしました。付けられるけれど刷りにくいものより、刷りやすくて同じ効果が得られるもののほうがよい、という判断です。
角パイプの脚には、角に丸みがついています。カバーの内側が角張ったままだと、丸い角がつかえて脚が奥まで入りません。
これは図面には出てこない寸法です。手元の脚を見て、丸みの大きさも指定してもらうようにしました。外側の角丸は自動で決まります(内側に壁の厚みを足した値になるので、壁の厚みが一定に保たれます)。
いま作っているところです。実際に刷って確かめる段はこれからで、そこで分かることがまだあると思っています。